日本に着想を得た製品が数多く発表

2011.05.17

日本に着想を得た製品が数多く発表され、例えばスカーフには「日本への憧れ」「大名」「盆栽、美しき時」「日光」と題しかものや、モネが好んだパリの「ジヴェルニー」の日本庭園を描いた同名の商品がある。タイトルからして想像されるように、「ジヴェルニー」以外は、いずれもヨーロッパで浮世絵などを中心に日本趣味(ジャポニスム)が流行していた19世紀末当時の日本観を労舘とさせるものだ。「日本への憧れ」には、兜を中心にエルメスらしく馬柄のもの3個を含む11個の印龍が描かれている。カタログでは、印龍は「薬のための芸術の優雅さを語るもの」と解説され、「『頭痛、万歳!』と思わず叫んでしまいそうな美しさ」だと賞賛されている。「大名」ではその中心には、「日出る国の皇子」を表すことが描かれ、全面に刀の鞘や鍔が描かれている。解説によれば、「刀は戦とハラキリの道具ではあるが、ここでは『日出る国』の君主達が継承した勇気と名誉という遺産を象徴している」のだそうだ。エルメスの手にかかると、葵の御紋もデザインの一部でしかない。江戸の人々は、切り口が葵の御紋に似ているということで、胡瓜も輪切りにしないで斜めに切ったという話があるが、そんな彼らが見たら卒倒しそうなデザインである。さらに古典的な日本趣味路線を邁進しているのが「盆栽、美しき時」だ。中心には銘が入った鉢に植えられた盆栽が鎮座し、その下に「盆栽、美しき時」と毛筆体で記されている。色調のバリエーションには、黒地に赤でこの文字が記され、エメラルドグリーンや紫の鉢に植えられた盆栽が並ぶという、なかなか強烈なものもある。カタログの解説は京都からのラブレターという形になっている。「7月26日、京都にて 私のサムライへ、愛は盆栽と違って、上手に育てればどんどん大きくなります。でも、私は貴方の上に陰を落としたりしませんから、どうぞご安心下さい。あれこれ気を揉まないでくださいね。この国は時間をかけてゆっくりと考える国なのですから。」このように1991年に作成されたスカーフは、色調など全体としてはあくまでもエルメス調が保たれているものの、日本人が使用するには二の足を踏んでしまいそうなものばかりだ。これは、現代においても欧米に「サムライ」「ハラキリ」という日本のイメージがなお強力に存在しているということを反映する好例でもあるだろう。もっとも当時の欧米では盆栽や、「愛」とか「楽」といった漢字を転写しか「漢字Tシャツ」などが流行しているから、新しい「クール」な「日本趣味」の反映と考えられないこともない。私がカリフォルニアに滞在していた1999年、ご近所に住んでいた老紳士も、テールランプの上に「三菱」と白く毛筆でしたためた真赤な「エクリプス」がいたくお気に入りだった。