伝統的な学問の知のもつ政治性をどう克服するか

2011.07.15

保育実践のなかで具体的にとられる方法は、よりどころとする学説によって主張する点が異なる。その結果、発達観・保育観の二極化がこれまで推し進められてきた。ピアジェの発達観を根拠に、個々人の自由な選択にもとづく実践が社会の規則やシステムを形成するという個人達成型の発達理論・保育原理が、政策科学の理論的根拠として巧みに利用されてきた責任は免れない、とルーベックは指摘している。このように、伝統的な学問は、人びとの行為は選択的な規則や規範にしたがって個別に生み出されると考える傾向が強かった。それに対して、子どもの実践知に関心を寄せる研究は、既成の制度、規則や規範、カリキュラムに従属することによって、人々の行為が産出されるとは考えない。その代わりに、過去から繰り返されてきた慣習によって、どのような相互行為が新しく産出され、個々の場において、どのように社会的な規範を読み替えながら社会的世界が構築されていくのか、その動的な過程全体をみようとする。つまり、被養育者である子どもが他者・モノを媒介に、偶発的で暫定的なできごとを含め、歴史的な制度・社会とつながりをもった、実践のコミュニティでつくり出す認知、思考や世界の見方の分析に徹しようとするところに特徴がある。

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